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「100日後に死ぬワニ」感想

3/20、100日後に死ぬワニのワニくんが死んだ。ワニくんが死ぬまでのストーリーを通して、この作品が読者に与えたものについて考える記事。

 

ワニに親近感を覚えた僕ら

この作品の特徴としてあげられるものとして、毎日更新の短編漫画(4コマ)、掲載場所がツイッターという二点を取り上げる。

これらがどのような効果を表すか、それは日常への浸透だ。

初日から数日の間は「なんか回ってきたなー」程度にしか思わなかった人も、作品がバズり始め、誰かの「いいね」の影響でTLに回ってきて、何となく読むようになった人も多いのではないか。僕はこのパターンで読み始めた。

一度読み始め、何度か読んでいると、そういえば今日の更新分を読んでいなかったなと思うようになる。そして作者をフォローするなりして、なんとなく毎日見るようになる。これが日常への浸透をつくりだす要素の1つ目だ。

 

では2つ目の要素は何かと言うと、物語そのものの日常性だ。

漫画の内容はワニくんの何でもない日常、例えばテレビを見て笑ったり、友達とご飯を食べたりといった、僕らの日常と何ら変わりのないものを描き続けていた。

つまり僕らは毎日更新される漫画を通じて、ワニくんの日常を見ていたのである。

ワニくんの毎日の行動をTLで毎日見る。友人の行動をTLで毎日見る。この2つの行動の差異は小さい。やがて読者は自覚的か無自覚的かに関わらず、ワニくんを友達、あるいは知り合いのように感じるようになる。

読者がワニくんに強い親近感を覚えるという仕掛けは、この作品の最も重要な部分だ。

 

ワニくんの死亡について思ったことと、死のメッセージ性について

ワニくんの死亡シーンを見てみなさんはどう思っただろうか?

僕は素直に悲しかった。

毎日平凡な日常をTLに回し続けていたワニくんが、もう現れることがないのかと思うと喪失感があった。

なぜ喪失感があったかと考えると、やはり前項で考えた、ワニくんに対する親近感が僕には生まれていたからだろう。

ごく近しい人でなくとも、毎日顔を合わせている人が突然亡くなったらショックも喪失感もあるだろうが、ワニくんの死亡はそれと同等のものに感じる。

 

ワニくんは突然死んだ。花見に向かう途中におそらく交通事故で死んだ。

「100日後に死ぬワニ」というタイトルがなければ突然のことに読者が呆れるような展開だが、突然の死は僕らの人生で起こりうるものであるし、身近に感じる場面が少ないだけで、それいったものを身近に経験した人だって少なからずいるし、毎日起きていることだ。

そんなことは頭になく、僕はいつまでも日常が続くかのように、日々をただ消化している。

この作品はそういった僕のような人に対して、日常の終わりが来ることを微塵も想像していない人に対して、「終わりはいつ来るか分からないんだから、悔いのないように生きなよ」と、そう言ってるように思った。

 

ワニくんの死を無駄死ににしたくないのなら、僕たちが悔いの残らないように日々を過ごし、彼の死に意味を持たせてやるのが一番の手向けだろう。