観たアニメ、読んだ本の感想を書くブログ

観たアニメや読んだ本の感想を書きます

新条アカネについて考える:GRIDMAN

「私は卑怯者なんだ。私は臆病で、ずるくて、弱虫で、」 

 この一文は、最終回でアカネが自分の性質について話したものである。これを頭に入れつつ、アニメ『SSSS GRIDMAN』のキャラ、 新条アカネについてのちょっとした考察を、アニメを一周だけではあるが見た自分が書いていこうと思う。読者はGRIDMANを見終わっているものと想定して書いていく。

 

新条アカネが怪獣をつくったわけ

  作中でアカネが怪獣をつくるタイミングは2パターンある。

 1つ目は自分の街の住民が、自分の気分を害するような行動をとったときだ。問川たち、先生、Youtuberたちに向けて怪獣をつくったのがこのパターンにあたる。

個別に何が悪かったのかを見ていくと、問川たちは遊びでバレーをしていてアカネが裕太にあげたパンを潰してしまった。先生は、アカネにぶつかるも謝りもせずに去っていった。Youtuberたちは、その一人がべたべたとアカネにくっつきに行った。

どれもささいなことと言えばささいなことである。しかし、「臆病な」アカネにとってはそうではなかった。問川たちの打ったボールが今度は自分に当たるかもしれないし、コミュニケーションの取れない先生は理解不能な怖い存在だし、Youtuberの性的欲求を満たすための行動がエスカレートするかもしれない。アカネ自身はおそらく外傷などは受けない肉体なのだろうが、そういった将来性を持つ人たちを、理想の街で暮らしたい神であるアカネが放っておく理由がない。だから怪獣を使ってその人たちを消そうとした。霧の外の怪獣の力で記憶の改ざんができるのだから、自分で手を下すという選択肢もあったのに、アレクシスの力を借りてまでその役目を怪獣に担わせたのは、アカネが卑怯者で弱虫だと自称するに値する行動選択の一つである。

 

 もう一つの怪獣を生み出すタイミングはグリッドマンを倒すという動機があるときだ。このパターンでの怪獣作成が全体で見ても多い。

なぜアカネはグリッドマンを倒したがるのか。その理由は簡単で、アカネが怪獣を使って人を街から消そうとする際にグリッドマンがそれを邪魔するからだ。臆病なアカネにとっての理想の街とは、自分に害なすものがいない街なのだろうが、アカネがターゲットをとする危険因子を消せなければ(アカネの主観的に)安全な街は保たれない。ターゲットを確実に消すためには、グリッドマンの存在がこれ以上ない程に邪魔なのだから消そうとしたり、仲間に入れようとしたりするのはアカネにとって自然な行動といえる。

 

 どちらのパターンでもアカネの心理の根底にあるのは理想の街(自分に害をなす者がいない街)を運営するうえで邪魔になるものは排除するという意思だ。平和な日常を繰り返し、それを脅かすものは取り除く。それがアカネの行動理念であり、理想としていた日々だったのだ。

 

アカネが引きこもった理由と外に出られた理由について考える

 アカネは最終回でアレクシスの内部からなぜ出ることができたのか。アカネが怪獣を生み出し気に食わない人を排除し街を安全な場所に保つのを認めてくれる存在がアレクシス=内部に留まり続けることを許容する存在であり、アカネはその中にいる状態である。これに対して六花、内海、裕太が自分たちを信じて頼って欲しい、そうすればアカネの世界も広がるからと外部=他人と心を通わせることで生まれる可能性を説く。その可能性を信じたアカネはドアを開けてアレクシス=内部から出ていく。そして街=内部から引っ越して、外部=元々自分がいた世界に行くことを決める。

 外に出ることのできた理由は、他人と心を通わせることができるとアカネが思えたからだ。その可能性を信じられたからだ。

なぜそう信じられるようになったかだが、それはおそらく、アカネのこれまでの行いや性格の悪い部分を知っている六花、裕太、内海がそれでもなお自分を友達だと言ってくれたからだ。

アカネは多分、自分が周りの人間と仲良く過ごすためには、周りの人間が好意的に思うような態度を自分が取らないといけないと思っていて、だから燗に触ることをされても直接は怒らず、家にその鬱憤を持ち帰り、その情動を素に怪獣を作るのだ。

そんなアカネだから、素直な自分の感情の吐露を見てもなお友達だと言ってくれる人がいる事実に心を動かされ、内部から出ることができたのだ。

 これが外に出ることのできた理由だと推測するなら、引きこもることになった理由はなにか。単純に外に出ることの出来た理由と逆の出来事があったからだと想像してみる。つまり、誰かに自分の感情や人間性を否定されたという可能性だ。そういったことがあり人間不信、あるいは自身の性格の受容ができなくなり、外に出ることが出来ない=他人の拒絶に向かって行ったという推測ができる。

 

 GRIDMANは引きこもりのアカネが外に出るようになるまでの過程を描いている作品であることは間違いないが、なぜ引きこもるようになったかについて考察するには判断材料が少ないように思う(自分が作中のメッセージを読み取れていないだけかもしれないが)。だからといってアカネが引きこもるようになるまでの過程を描いたOVAが欲しいかといえば、僕は興味があるが、本編程の人気を得るには難しいテーマのストーリーになることは間違いない。だから本編でもそういったアカネの過去の描写がなかったのかもしれないと考えている。

 

おわりに

 周りに嫌われないような行動を選ぶ人、他人と深い関係を築くことに臆病な人、そんな人はたくさんいると思う。僕もそうだ。だからこそ外に出たアカネを尊敬するし、勇気をもらえた気がする。きっと同じようにアカネから勇気をもらった人、自分と似た部分を持ったアカネを好きになった視聴者はたくさんいたと思う。アカネを救ってくれてありがとうGRIDMAN。